つぶやき第8回:オレンジワインとフリウリワイン

オレンジワインというものが最近流行している。白ワインでもなく赤ワインでもなくロゼでもない新しいジャンルということで、この言葉は2004年にイギリスで始まったらしい。要は簡単に言うとマセレーションをした白ワイン。マセレーションとは赤ワインのように発酵時に葡萄の果皮を果汁と一緒に醸すことで色がつく。まあ、もっと簡単に言うと赤ワインの製法で作った白ワインだ。

ワイナートのNo95 (2019年9月)がオレンジワインの特集なので見てみた。起源はジョージアとイタリア州のフリウリ。個人的に嬉しいのがフリウリの生産者として代表格とされているのがラディコンとグラヴネル。両者ともに友達のフランコの隣人でイタリアでもリーダ格とされているグラヴネルはフランコの畑の隣(窓からすぐ家が見える)でラディコンは道路を隔てたところだ。グラヴネルに至ってはフランコの師匠であり、今思えば、グラヴネルが小樽での発酵を始めたときはフランコも小樽で発酵を始めたし、より果皮を抽出させたオレンジ系のワインも似たような時期に始めている。

2005年からフリウリに何度も訪れている私としてはオレンジワインという言葉に違和感がある。

・オレンジワインのジャンル:つい先日もオレンジワインっていうことで薄っぺらく、ワインと呼んでいいのかわからない日本のワインを試飲した。色と製法がオレンジワインということであれば消費者は混乱する。

・牽引してきた2大生産者がラディコンとグラヴネル。確かに事実かもしれないが、初心者はまずこれらのワインを美味しいと感じることはないといって過言ではない。特にラディコンはシェリーのような還元臭が満載で肝心な葡萄の果実味を感じることはできないからだ。グラヴネルは特別かもしれないが、表現が難しい。まるで上質のウイスキーのような味なので巷でいうオレンジワインとは一線を隔てる。

・ジョージアとフリウリのワインを並べて語っているのもどうかと思う。起源としてはそうかもしれないが、ワインの技術・品質は天と地ではないか?

個人的な思いだがワインは葡萄と土地の本来の良さを表現することが重要だと思う。果実味がないワインを私はあまり好きではない。友人のフランコは良い場所に土地を構えたと思うし環境も良い。ラディコンのように行き過ぎた発酵はしないし、グラヴネルのように難しいワインは造らない。フリウリといえば3つの品種がまず重要でリボッラ・ジャッラ、マルヴァジア、フリウラーノ。これにピノグリージョ、ソーヴィニヨン、シャルドネが続く。赤葡萄はメルロー。

まとまっていない・・・、が、私が販売側の立場であればオレンジワインがほしいと言われたら、オレンジワインの聖地で国際的にレベルの高い生産地のフリウリを間違いなく選択する。その上で異なる特徴のある生産者のワインを飲んでもらうことで消費者は楽しめるのではないだろうか。例えば香りの高いマルヴァジア、酸が特徴で偉大な長熟ワインとなるリボッラ・ジャッラ、フルーティなフリウラーノがスタートか。初心者ならフリウラーノ。スパイスの効いた食事ならマルヴァジア。ブルゴーニュなどの偉大なワインを飲み倒してきた人にはチーズとリボッラ・ジャッラ。

Dec 2019, Ken Hattori

つぶやき第7回:グラスワイン?

先日イタリアン系の結構な値段の店に訪れたが、ワインに対しての常識は日本ではあまりないと感じた。ハウスワインではなく、一杯1000円以上するようなワインだが、お客様の前で注がない。つまりオーダーしたものがどんなボトルなのか、何年ものなのかもわからない。消費者からすると詐欺に近い。というか、ヨーロッパでは有りえない!つまり何が注がれたのかわからないということでそれに対して、鈍感なサービス提供をしているのが残念。当然こんな店には二度といくことはない。これだから日本でイタリアンやフレンチに行くことがほぼ無くなるのだ。

一方で和食になるがそばが中心の店ではきっちりとその場で注いで、しかもそのラベルの縮小版をいただけるところがあった。この店はワインだけではなく焼酎、酒もそうである。良い試みだと思う。この店は何度か訪れている。

つぶやき第6回:スーパトスカン

スーパトスカン(トスカーナ州のすげえワイン)という言葉だが、元々はサッシカイアがボルドータイプのワイン、つまり土着品種の葡萄以外のカベルネやメルローを自家用に作っていたところから始まっている。このときはまだ分かる。自由な発送で土着品種に執着せず、良いワインを生産する。特にサッシカイアは有名だけではなくその実力は素晴らしく15,000円であれば間違いなく買いの一本(去年から値上がって18,000円付近となってしまったが、それでもボルドーの有名シャトーに10万出すくらいであればコスパは良い。飲んでいない方は絶対飲むべき一本の1つ。

しかしながらスーパトスカンは有名無実化したといってもよい。つまり法律を外れた葡萄を使えば何でもかんでもスーパートスカンと言われる。

法律は例えばキャンティ・クラシコ。主な決め事だけでもたくさんある

  • 品種(サンジョベーゼ70-100%), その他トスカーナで認定されている品種。白ぶどうは10%まで・・
  • 栽培地域
  • 標高は700Mまでとかヘクタールあたりの収穫量
  • 熟成期間や販売時期

要は法律に沿ってキャンティを作るのも大変なことでしかもそれだけのことをしても、一部例外を除いてせいぜい10−30ユーロでしか売れない。ところがスーパトスカンといった途端、良い品質であれば値段が跳ね上がるのだ。

トスカーナのワイナリー巡りで本当に思ったが、トスカーナはやはりサンジョベーゼだと思う(もちろん例外はたくさんある)。例えばワイン好きなら知っていると思うが、ブランカイアというスイス人が成功を収めたワイナリがある。ちなみその名残か従業員もフランス語とドイツ語を操っていた・・・ このブランカイアのフラッグシップがスーパトスカンのイル・ブルー(THE 青)でカベルネやメルローを混ぜ込んだワインだ。小売価格は8000円前後。一方でキャンティ・クラシコリゼルヴァという法律に沿って作ったワインの小売価格は4000円前後。前者も美味しいが後者はやはりこれぞトスカーナ!というワインで素晴らしい。

話が長くなってしまったが、消費者側からすれば何を重視するのかによって違うから何とも言えないが、個人的にはイタリア中を周ってきたのでその土地を思い出すようなワインを選ぶ傾向にある。

September 2019, Ken Hattori

つぶやき第5回:ワイナートを振り返って Number1, 1999 冬号

ワイナートは日本でもよく読まれているワイナリーの雑誌で当時はまだ季刊誌だった。歴史あるNumber1はカルフォルニア特集である。99年だからまだ私がアメリカ在住のころでワインに目覚めたころなので懐かしい。

さて、中身はというとモンダヴィ、パッツ&ホール、スタッグスリーブ、ガロ、リッジ、アロウホ、シェイファーなど豪華メンバーの紹介。モンダヴィはこの頃から今で言うIOTで畑ごとに5分ごとの気温データを収集して役立てていたのだからすごい。今でこそやっとボルドーでもIoTの活用は普通になったが20年前というのだから、やはりモンダヴィは凄い貪欲さであった。

この頃のカルフォルニアワインはキャノピーマネージメント(簡単に言うと樹勢をコントロールしていくこと)中心から所謂テロワールに議論が移行していた時期でもある。同時にカルフォルニアワイン=高級ワイン志向に向かっていった時代でもある。まあそれでも当時は手が届く価格であったので一般の人でも有名なワインを飲めた時代でもあった。

ワイナートは残念なことにロバート・パーカーと同じくワインに100点満点を採用している。ロバート・パーカー(ワインアドヴォケイト)は50点の基礎点に色5点、香り15点、味わい20点、将来性10点としており、ワイナートもほぼ同じで基礎50点、色5点、内部的構造15点、内在的審美的価値と将来性15点で表現している。まともなワイン好きであればこの数字が無意味なことは分かりきっているのでここではそういうものだということにしておく。

さて肝心のブラインドテースティングは以下となっている

カベルネ部門

1位 アロウホ アイズリーヴィンヤード

2位 ダラ・バレー

同率2位 ハーラン・エステート

・・・ 今の小売価格でいうとそれぞれ5万、4万、12万程度か

ちなみに、カベルネブレンド(ボルドーブレンド)トップはスタッグス・リープワインセラーズ カスク23、ピノ・ノワールはエチュード、ジンファンデルはリッジのリットンスプリングスとなっており、それぞれの小売価格は3万、7000円、7000円。

オークションなどでしか手に入らないような(今は小売でも販売)アロウホ、ダラ・ヴァレー、ハーランが扱われているのは残念・・

小売価格の変化は以下となっているのが分かる。こう見るとボルドーの狂った投資による高騰と比較すると可愛い値段の移り変わりである。カルフォルニアワインも見直すべき時期が来ているかもしれない。

・アロウホ 200-300 ドル → 5万

・ダラ・バレー 150ドル → 4万

・ハーラン 250ドル → 12万

・スタッグスリーブ 2万→3万

・エチュード  35ドル → 7000円

・リッジ  3800円 → 7000円

August, 2019 Ken Hattori

つぶやき第4回:コルクとスクリューキャップ

ワインのコルクとスクリューキャップどちらがいいのかですが、個人的には高級ワインでスクリューキャップ(現行世界シェア15%程度)がコルクを置き換えることは今後もないと思います。以下が思いつく理由かな。

  • コルクは環境に優しくない??

そもそもコルクの原材料となる樫の木は樹齢が高いものを対象に10年ごとに剥いで使うので別に木を伐採するわけではない。つまり環境問題でコルクが無くなることはない。

  • コルクは高い??

一般的なコルクとスクリューキャップの値段差は2倍でスクリューキャップは1個あたり12-15円。さて、2倍だろうが3倍だろうが1万円のワインでインパクトはあるか? あまりないですよね。

  • ブショネがマイナス

ブショネとは主に化学変化がおきて嫌な匂いがワインについてしまってだめになる現象。統計がばらばらですが5%前後とみて良いですね。つまり2ケース(24本)買えば1本がブショネだということ。しかしブショネは非常に厄介で、完全にわかるケースはすぐに分かるので、レストランであれば交換をすればいいです。

私の経験は今まで10回ないかな(最悪のケースは2本連続がありました)。一方、わかりにくい場合は単に本来のワインの味を消しているケースがあります。これが厄介。本来のワインの味なんてしらないすよねーー。

シャトー・マルゴーを飲んで“うーん、まあまあ美味しいけど薄っぺらいね”などと感じた人がいるとします。ところが一般人にシャトー・マルゴーの本来の味が分かる人が何人いますか?よほど飲み続けないと無理。つまりブショネでもわからない場合がほとんどのケースであるということ。

ちなみに飲み手がレストランで2万円のワインを頼むときに同じワインで片方がスクリューキャップともう片方がコルク。どっち選びますか?ブショネが危険だからスクリューにしようって人はまずいないでしょ。

  • 熟成

ある人はコルクはゆっくりと酸素を取り入れるから熟成するんだよっていう人もいるし、ある人はスクリューは密封するからさらにゆっくりと熟成するよねっていう。個人的にはどーでもいいと思う。気持ちの問題。

最後に・・まあ最近はブショネが発生しないコルクも高いですがあるそうですので超高級ワインは使っているみたいですよ。個人的には3000円以下のワインは全部コルクにしてくれって思います。変に合成コルクとか使うくらいでテンションが下がるくらいならスクリューで十分。

July 2019, Ken Hattori

つぶやき第3回:ブレンド

ボルドーでシャトーを回ると本当に根強い文化なのかみんなブレンドが大好き。カベルネは骨格、メルローは柔らかさ、プティベルドはスパイス・・・などなど。でも本当に味の完成を求めるためにブレンドとしているのでしょうか?

確かに品質を一定に保つために昔はこのようなブレンドでネゴシアンという商人が買付をして独自にブレンドをして販売をしていたのでその名残でなっているだけというのが現実ですが、ブレンドはしたくてするケースは伝統的なワイン地域(ボルドーなど)では逆に少ないかもしれません。

その1: いまさらブランドを捨てるわけにはいかない。

ボルドーは歴史があり格付けがありワイン名=シャトー名となっているので消費者からは分かりやすい。(格付けについては別項目でつぶやくが、要は消費者としては迷惑な制度でワイン業界を歪めている)。

よって今更シャトー・マルゴーがメルロー100%のワイン、カベルネ100%のワインなど販売ができるわけがない。シャトーマルゴーといえばシャトー・マルゴー、たった1つのワインでブレンドされたワインなのだから。 

その2: ブレンドの比率とは

ブレンドの比率を変えるとまったくことなるワインの性格になる。それであれば同じワイナリでもかなり違うワインができるのではないかという疑問もある。にも関わらず、シャトー・マルゴーはシャトー・マルゴーとしての性格をもったワインと例年なる。これは単純で、作付面積の比率に沿っているだけなのだ。メルロー80% カベルネ20%の面積ではその比率のブレンドになる。仮に、このケースにおいてカベルネ80%のブレンドワインのほうが良いワインだとしても作らないし、生産量が保てないのだ。結局落ち着くところに落ち着くことになる

その3: ブレンドvs. 単一品種

消費者からすると、美味しいワインを飲みたいので、ブレンドなのか単一品種なのかはどうでもいい。ただし、これがまさに複雑で消費者を混乱させる。例えばある人がボルドーのメドックをソムリエに頼んだとする。こうなるとソムリエは難しい。メドックという地域でもカベルネでほぼ構成しているワインもあれば、メルローで構成している場合もあり両者はまったく違った性質のものだからだ。

ちなみにこの現象は2のブレンド比率の作付面積に関連するが、メルローという葡萄は水分を欲する。そのため基本は粘土質の畑を好む。一方晩熟型のカベルネは水分を極端に嫌う。そのため水はけのよい砂利の畑を好む。つまり葡萄そのものも全く違う正確のもので、メルローとカベルネは似て非なるものなのだ。

話が逸れたが、ブレンドかそうでないかはどうでもいい。ワインは生産者で選ぶという基本を忘れなければ大丈夫。

その4: 実験してみよう

ボルドーのあるシャトーでブレンドの体験をした。その時は4種類 若木で作ったカベルネ・フラン、古木で作ったカベルネ・フラン 若木で作ったメルロー、古木で作ったメルロー。ワインを少し知っているのであればカベルネ・フランとメルローということでサンテミリオンかポムロールのワイナリーだなと分かりますよね。

さて、このワイナリでの体験は4種類を単体でテースティングをしてからブレンドしてみます。カベルネ・フランは骨格とスパイス。メルローは丸く、果実味があるので、ブレンドの仕方でまったく違うワインになります。若い木の葡萄は明るく、酸味が強いが総じて飲みやすいワインになり、年寄りの葡萄は旨みとコクをもたらします。どちらが好きかは個人の好みです。

家でブレンドの実験をするのにオススメなのが、チリの反則コスパのコノスル。800円くらいのビシクレタシリーズで良いでしょう。何本かで試してみると盛り上がりますからオススメします。

つぶやき第2回:欧州と日本のレストランとワイン

ヨーロッパに長年訪れてレストランに行ってワインを飲んでいると、日本のレストランでワインを頼むのが嫌になるので外で飲む機会が本当に少なくなる。文化的なものを言ってしまえばそれまでだが、これだけ日本でワインが消費されているのに提供側の知識不足なのか状況はよくない。

その①グラスワインの量

日本ではボトル750mlで8杯取り(つまり1杯100ml満たない!)のレストランが多い。まあ、6杯取り(125ml)のケースもあるがそれでも少ない。例えばボトルの販売価格が3000円だとする。前者の8杯取りだと、1杯400円、後者だと500円となる。もちろん売れ残りがでるので実際はそこにリスク係数を入れて高めに提供することが多い。どちらにしても8杯取りなんかで出されるとワインを飲んだ気持ちにならない。パリやイタリアの気軽なビストロみたいなところだと、ほぼグラスワインは入れすぎっていうほど注がれてくる。高級レストランはともかく気軽な店でグラスの3分の1にも満たないグラスワインがでてくると食欲も失せるものだ。

その② 原価率がおかしい

これは経営側からすると文句が来そうであるが、日本のレストランはおかしいほどの原価率計算をしている。仕入れの3倍は平気でかけてくる。つまり1000円のワインでも3000円になる。3000円のワインはなんと1万となってしまうのだ。こんな状況でワインを気軽に外で飲むことはまず無理。特にワインを知っている人からするとアホらしくなってしまう。ヨーロッパではだいたい1.5−2倍。ミシュランの2つ星でも2倍程度。つまりミシュランの星付きレストランでも5000−6000円でボトルを十分に楽しめるわけだ。ちなみに3つ星は3倍のところが多い。3つ星は値段のステータスも重要だからだ。ただしサービスやワインのレベルが違うので3倍払っても高いという思うことはまずないといっていい。

話を戻すとそこのレストランしか飲めないようなワイン、何千本もストックしてあり保管状態も良い店、最高のサービスと最高のソムリエがいるような店は3倍でも良いのだ。なぜならば3倍払う価値があるからだ。私自身もヨーロッパではレストランでワインを買うことがよくある。それはどこを探しても手に入らないワインで、さらに保管状態も最高なケースの場合が多い。ただ私の場合は原価と価値を知っているので2倍以上の値段では買わないようにしている。

一方、居酒屋などでコンビニでも売っているようなワインが3倍の値段だとあほかと思いたくなる。有名な立ち食いのXXXステーキなどは1杯のグラスワインの値段が小売の1本と同じものがあった。つまり6倍以上消費者にふっかけているというわけだ。経営側があほなのか、儲けようとしているのかは分からないが消費者はそこまでバカではない。

私がイタリアのトラットリア(ビストロ)にいくとまずよく飲むのがプロセッコ(ヴェネト州のスパークリング)。これはテラスで飲むには最高の1本だ。席についたらほぼリストは見ないで、すぐにオーダをする”Avete una botteglia di prosecco?” – プロセッコボトルで頂戴だ。値段は見ない。なぜならばプロセッコのそこそこのやつは7−8ユーロで仕入れができる。だいたい店は仕入れの2倍にするから15ユーロ程度となる。相場があるのだ。ビストロなんかでワインを頼むのに、高級レストランのように値段とにらめっこしないとだめなんて、楽しみが半減だ。グラスワインも同じでピノ・グリージョ(品種)が飲みたければVorrei un bicchiere di Pinot Grigio” – ピノ・グリージョ一杯頂戴だ。

居酒屋であればビールいっぱいの代わりにプロセッコやカヴァなどの安旨スパークリングを売り込めばいいと心底思う。生ビールは原価率が悪く儲からない。場合によっては赤字のケースもある。一方1000円の仕入れプロセッコを2000円で販売するとする、4人テーブルであれば1人500円で飲めるではないか??原価率は悪いが確実に1本捌けるので店としては生をずーと飲まれるより良いはずだ。1000円の仕入れを3000円なんかで売るからおかしくなるのだ

その③ ブランド好き

人のことは言えないが、実際の消費者はブランドを重視する(それが悪いわけではない)。デートなどで“イタリアのエトナ山麓のXXワイン”っていうよりはブルゴーニュって言ったほうがわかりやすいしかっこいいからだ。これはこれで悪くないが、名前より質をとる消費者がいることもレストラン側は理解しておくべきである。投棄が入り間違いなくコストパフォーマンスが悪いボルドー、ブルゴーニュ、ナパなどを扱うようでは努力が足りないといえる。特にあまりワインを飲んだことない人は美味しいワインを飲みたいだけのケースがあるのでこの場合は質をとればいい。

ただ質が取りにくいのは仕方ないことかもしれない。ほとんどのレストラン経営者は実際に生産者を訪れてワインの本質を知る機会はないからだ。ちなみにこの現象はほとんどのソムリエも同じことだ。試飲会などにいって年間1万本テースティングしても、井の中の蛙ということ。試飲会は数が多いのでインパクトだけの評価になりすぎだからだ。そのワインを知るにはどの料理と合わせるか、いつの季節に飲むのが良いか、誰と飲むのか、抜栓後初日の状態と2日目はどう変化するのかなど考えることがサービス提供側は重要だ。夏にバローロやボルドーを出されても困るではないか・・・

今はないとは思うが、フランスではボトルを見せずにデキャンタをしたものをソムリエがもってくるような店もあった。つまり、消費者の先入観をなくすためだ。本当に美味しいものを味わってほしいということだ。

個人的に信頼ができるソムリエがいた店は2箇所。1つはフランクフルト郊外のラインガウにある店、もう1つはリスボン郊外にある店だ。優れたソムリエは懐具合も、さり気なく察してくれる。決して1万を超えるようなワインは勧めない。なぜならば彼らは自分の足で何がコストパフォーマンスが良いのか、地元の誇りと情熱を持っている。このようなソムリエの場合はすべてお任せする。日本にもそんな店があればよいが出会ったことはない。

その④ ハウスワインの意味をわかっていない

ハウスワインはその店の顔だ。ハウスワインは店が努力をしてリサーチして、コスパ抜群のワインをいかにお客様に提供するか、いわゆる店の見せ場なのだ。日本でまともなハウスワインに出会ったことはまずない。安い流通の多いまずいワインを出すところばかりだ。つまりそんなものを出すくらいならハウスワインなど提供しなければいいのにと思う。

July 2019, Ken Hattori

つぶやき第1回:ワインの消費量について

日本においては人口1人あたりのワイン消費量は今3リットルまで上がっています。20年前が1リットルですので単純に20年間で3倍も需要が増えています。この10年でも150%伸びているのでなかなかの市場となっています。*

さらにこの数字は人口一人あたり、つまり老人も赤ちゃんも含まれています。実際は5−6割程度が飲む世代とした場合は人あたり6リットル、つまり8本程度となります。**(総務省の人口統計の分割が15-64歳とかになっているからわかりにくい)。

どちらにしてもフランスと比較すると10分の1にも満たないので、文化的な浸透はまだまだですね。ちなみに世界のトップ2はバチカン、アンゴラ***ですがまあこれは数字あそび。バチカンは人口1000人ですし、アンゴラはいってしまえばヨーロッパ大陸の免税店(ガソリン、買い物などでごった返すところ)ですから数字が高くなるのは当たり前ですね。

July 2019, Ken Hattori

Reference:
*https://www.kirin.co.jp/company/data/marketdata/pdf/market_wine_2017.pdf

**http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2016np/


**https://www.forbes.com/sites/niallmccarthy/2016/05/17/the-worlds-biggest-wine-drinkers-infographic/#315391837a57